沿革


 

1945(昭和20)年 「迅速分析部門」(現、分析科学研究部門) 内にて、所内依頼試料の分析開始

1954(昭和29)年 依頼試料の分析が本務の「共通分析室」<支援組織>、金属分析部門と分離・改編

1987(昭和62)年 「技術部」(現、テクニカルセンター)へ、他の所内支援組織と共に再構成

          実務は引き続き、旧共通分析室の枠組みで実施

同年      金研が全国共同利用研究所に改組

1998(平成10)年 「材料分析研究コア」<支援組織; 所内措置>発足

          旧共通分析室+"分析電顕室"(1984(昭和59)年~)

2004(平成16)年 国立大学法人化

2022(令和  4)年 旧ナノテクノロジープラットフォーム事業(現、ARIM事業)担当職員が合流

          現行「元素分析室」・「分析電顕室」・「ARIM事業班」体制に組織化 <所内措置>

 

* 複数の異なる年・内容が記録されている資料があり不明瞭な点があります。不正確な記述に気づいた方は是非、情報をお寄せください。

 

 

歴代 材料分析研究コア長

1998(平成10)年 平賀 贒二 教授 (不定比化合物物性学研究部門)

2003(平成15)年 我妻 和明 教授 (分析科学研究部門)

2019(平成31)年 今野 豊彦 教授 (不定比化合物材料学研究部門)

2022(令和  4)年 秋山 英二 教授 (耐環境材料学研究部門)

 

 

前身組織と特に関係の深い研究部門

後藤 秀弘 教授 (1945-1954 迅速分析, 1954-1969 金属分析)

廣川 吉之助 教授 (1975-1987 示性分析学, 1987-1996 分析科学)

 

 

材料分析研究コア (共通分析室)

 本所の分析部門は、昭和29年(1954)に、化学分析法の開発・改良研究を行う金属分析部門および依頼試料の分析を本務とする共通分析室の2組織に改編された。その後、昭和48年度に研究室が示性分析部門と改称、化学分析法の研究に携わらなくなったため、共通分析室は依頼分析に加えて化学分析法の開発・改良も担うこととなった。昭和62年(1987)に本所の全国共同利用研究所への改組に合わせ、支援組織も再構成されて技術部・班・掛の体制となり、共通分析室の名称はなくなった。ただし、組織機能としては引き続き、旧共通分析室の枠組みで業務に当たっていた。その後、平成10年(1998)に、旧共通分析室に加え、分析透過電子顕微鏡による支援機能も併せ、材料分析研究コアとして言わば再組織化し、現在に至っている。このうち透過電子顕微鏡の組織機能は、設置する部屋の名前をとって分析電顕室と称することが慣例となっている。現在、化学分析担当6名、分析電顕室担当3名の計9名が、本コアの研究支援業務に携わっている。

 共通分析室発足当時の本所における材料研究は、鉄を主体とした構造材料・磁性材料が対象で、分析試料のほとんども鉄及び鋼であった。鉄鋼試料が依頼の半分以上を占める状態が昭和60年(1985)頃まで続いた。昭和50年頃からは、非晶質合金、耐熱セラミックス、無機結晶(主に酸化物)、高融点金属合金、超高純度金属など、多種多様な試料の依頼が次第に増加した。これら試料の分析には、昭和40年頃までは定量元素の化学分離を伴う吸光光度法・重量法・容量法など、いわゆる湿式化学分析を用いていた。その後、元素分離を必要としないフレーム原子吸光法、さらに昭和60年頃には多元素同時分析が可能なICP発光分光法を導入し、分析作業の効率化を図ってきた。分析研究室・共通分析室は、戦後のわが国における鉄鋼試料の公定化学分析法(JIS法及び日本学術振興会製鋼第19委員会法)の設定・改訂に大きく関わり、鉄鋼分析の技術水準を判定するために用いる日本鉄鋼認証標準物質(JSS)の認証値を決める分析所の役割も担ってきた。後者については現在も、本所が全国の大学の中で唯一の分析所として参画し、本コアがその役割を担っている。また、日本鉄鋼協会や日本鉄鋼連盟、日本分析化学会と連携し、他分析所との共同実験や情報交換、あるいは学会講演や論文投稿による研究成果の公表を通じて技術レベルの向上を図るとともに、認証値を決めるために欠かせない手法である湿式化学分析の維持・継承にも努めている。

 分析電顕室は当初(昭和59年)から、鉄鋼材、半導体、非晶質合金、耐熱セラミックスなど、本所の材料開発に関わる評価に利用されてきた。加えて、本コア発足と前後して多元研、工学部など所外の利用者も次第に増え、現在では所外からの利用がおよそ4割を占めている。観察試料も構造材に加え、金属微粒子、積層デバイスの断面構造観察、有機材料など、多岐にわたるようになった。平成22年(2010)には、分析透過電子顕微鏡を更新し、高分解能観察、微小部の組成分析なども可能となった。

(『金属材料研究所創立百周年記念誌』(2017)より)